ワンライナーキャンバス

 仮説検証活動の多様性を高める、これは自分が抱えている大きなテーマだ。プロダクトとして「何をつくるべきか」を探索する際に、権力の偏った役割を置くのは活動として分かりやすくはなるものの、自分たちで可能性の上限を置いてしまうことになる。何が選択として妥当なのか判断し難いだけに「判断を下す役割」を置くと意思決定が格段にやりやすくなる。その分、プロダクトチームとしての意思決定はその役割に大きく依存することになる。

 そうしたフォーメーションでひとまず最初の形作りを行おう、その後で実地検証によってプロダクトを適応させていこうという作戦はもちろんある。だが、多くの場合最初に置いたフォーメーションを崩すことはできないだろう。分かりやすい運用は、それだけ人に現状からの重力を与えることになる。

 ゆえに、役割による調整ではなく、チーム活動の中心に仮説検証を置き、皆が参画し、学びを同じくとしプロダクト作りを進めていく在り方を模索する。これが冒頭で掲げた「仮説検証活動の多様性を高める」というテーマ設定だ。誰か1人に仮説検証活動を委ねるのではなく、チームで担う。このためにはまず、仮説の構造を見える化する必要がある。誰かの頭の中にのみある。あるいはそれぞれの頭の中にある。という状態では、「学びを同じくとする」ことはできない。チームとしての意思決定をまとめることもできないだろう。

 仮説検証活動にチームの皆が参画するためには、一つチームの基準を明確にしなければならない。そのための手段として「仮説キャンバス」を挙げる。


 こうしてまずはチームで持つ仮説構造を一つ固める。何を見ているかが一致すれば、意見の的を絞ることになり、活動が噛合やすくなる。

 この見える化は一歩であるものの、その一方で、仮説キャンバスをファーストに置いた進め方は現場によっては難易度が高いということも理解できる。キャンバスの内容は論理性に基づく。ロジカルに考えることに慣れていなければ、取り掛かりづらく感じてしまうだろう。結果として仮説検証に参画する敷居を高めてしまう。

 仮説キャンバスにいきなりとりかかるのが難しく感じるようであれば、もう少し構造を小さく捉えることからはじめても良い。ワンライナーキャンバスのように。

 これだけでも、仮説の構造として最小限つかめることになる。

 思うに、仮説検証の多様化のためには「段階の設計」が欠かせない。これは仮説検証に限った話ではなく、アジャイルの実践にあたっても同様だ。いきなり理想とされる形から入っていくにはハレーションが大きくなる。どのような段階を置いて理想に辿り着くのか、その傾きが無謀すぎないかといった構想をチームで描くようにする。まずは、ワンライナーから各自で始めて、やがて仮説キャンバスを描くようにするといった具合だ。チームの練度に応じて、この段階をもっと刻んでも構わない(キャンバスの描くエリアを絞るなど)。

 大切なことは、こうした段階を青写真として初期段階で描くもののそれはあくまで最初の見立てであるという認識でいることだ。段階が進めば、次に進む階段として最初に描いたものとは違うものが見えてくる場合がある。現実に捉えられることこそ、次に進むための手がかりだ。最初の構想で自分たちを縛り上げないようにしたい。

Photo credit: MTSOfan on VisualHunt / CC BY-NC-SA

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