2022.08.18
# ビジネス

不確実性の時代に「生き残る組織」に変わる「組織アジャイル」の始め方

最初の一手は、あなたから始まる
多様性と不確実性にあふれた現代社会で、DXによる「変革」を求められている企業組織。必要なのは詳細な計画ではなく、目まぐるしく変化する状況に対応する適時適切な機動性だ。
日本のDXを推進する株式会社レッドジャーニーの代表で、著書『組織を芯からアジャイルにする』を発表した市谷聡啓氏が、ソフトウェア開発における「アジャイル」を組織運営に活かす、新たな「働き方」を提示する。

優れた手段はあるのに成功しないDXのなぜ

何が起きるか分からない。現実の世界において、その不確実性は広がり続けている。感染症に伴う事態は今世紀を代表するレベルでの出来事であるが、もはやこれに限らず想像だにしないことが起こりうる危うさがある。その危うさと実は隣り合わせにあることを私達は日々目の当たりにしている。国際情勢、経済、政治、ここであらためて具体を挙げるまでもなく、私達は不確実な現実の中に取り残されてしまっている。

こうした中で、企業組織は数年前よりDXという名の「変革」に躍起になっている。その活動は、顧客や社会に向けて提供するサービスや商品の見直しと再定義から、組織内のあり方にまで及ぶ。これまで通りの延長線で事業を展開しても、引き続き成果が約束されるわけではない。組織を取り巻く状況と環境をよく観察し、何が求められているかを探り直さなければならない。

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前向きに捉えると、現代社会は多様性と不確実性という双生児によって躍動感を取り戻しつつあるといえる。ただし、それは組織として「何を成すべきか」という判断を極めて難しくする環境になっていると言える。

そのことを理解しているからこそ、ただ提供するものを変えるだけではなく、組織内部の根本的なテコ入れまで変革を広げなければならない。業務のプロセスやツール、働き方やオフィス自体のあり方について。あるいは、組織構造と体制、これから求められる人材像と、その採用と教育まで。組織の根幹を成す仕組みそのものに、スコープは広がっていく。

ゆえに、一筋縄ではいかない。「DXが圧倒的に成功し、躍進した組織が次々と生まれている」という状況に向けて、現実は相当な距離がある。これまで拠り所にしてきた判断基準、振る舞いだけでは太刀打ちできるものではない。組織が自ら変化を誘発し、その変化に耐えうるケイパビリティ(能力)を備えていかなければならない。

「つまり、DXとは組織に変化をもたらすためにイノベーションを起こせということか。また、その手の話か」と思われるかもしれない。私もそう思う。この言葉を頼りに私達はこれまで一体どれだけの時をかけてきただろうか。その結果は常に目の前の日常で突きつけられている。組織変革への取り組みが成果まで辿り着くことは少ない。もっというと始まりすらしないことも多い。

一方、イノベーションを促そうとする書籍や情報自体は世の中にあふれている。私も自分で積み上げてきた書籍の山を少しかき分けてみると、イノベーション、そして組織の変革に関するものを数多く発掘することができた。どれも、時を超えていまだに有用な内容のものが少なくない。20年、10年前に謳われた変革の処方箋がいまだに、通用しそうだ。そのこと自体に、危うさがある。私達はたくさんの模範解答を得ながら、一体何をしてきたのだろうか。

そう、何をするべきか(WHAT)は既にあまたある。デザイン思考、スペキュラティブデザイン、アート思考、リーンスタートアップ、あるいはOKR、パーパス、クレド、1on1、イノベーションのジレンマ、両利きの経営。これほどの手段が掲げられているにもかかわらず、新たな「やるべきこと」を増やすことが突破口になるとは思えない。むしろ、こうした数々の処方箋をいかに、適時適切に適用していくか。組織の「動き方」こそ、私達に足りていない最後の欠片ではないか。

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