現場に轟く雷鳴、一撃世界を変えるのか。

「現場をもっと前進させたい」というご相談を受けることが昔から、よくある。では現場の他のみなさんの声を聞いてみましょうと、座談をしてみると、現場の空気が少しだけ垣間見える。様々な思いが交錯する。事実も、推論も、思いつきも、愚痴も。

「ウォーターフォールか、アジャイルなのかは、どうでもいい」

ウォーターフォールとアジャイルどちらが正しくて、どちらが間違っているのか、突き詰めることには、おっしゃるとおりそれほど価値はない。だから「◯◯はどうでもいい」という発言自体は、その次に紡ぐ言葉が何かの方がよほど大事である。そして、多くの場合どうでもいいの後には言葉が続かない。

方向性を見出すために、一つのタフクエスチョンを問いかける。

「みなさんは、なぜ受託開発をやっているのですか?」

この質問に向き合い、エクスキューズではなく身から出るような信念を聞けることは、極めて少ない。たやすい問いではない。が、ここに向き合わねば、前進しようとする足取りも覚束なくなる。案の定、問いは座談会にやや重くのしかかる。

ここに向き合うところからかな、そう思って会議を切り上げようとしたとき、沈黙していた依頼者から一気呵成に言葉が飛び出した。まるで、雷鳴の如き迫力と、信じてやまない強い思いが溢れ出るもので、一撃、魅了されたのであった (私が)。

素晴らしい。こうした思いに寄り添い、仕事ができるのは、自分で会社を立ち上げた本懐というもの。一方、組織をちょこっと動かすために、その度に雷鳴を轟かせ続けるというのでは、限界がある。ここでのイカヅチは怒りではない。海を割るような、先導感だ。

居合わせたみなさんも、思いへの賛意を示す。その場にいれば何だってできるだろうという気持ちが沸き立ってくる。だが、いつもの日常を経て、冒頭の混沌とした状態へと戻っていく、その繰り返しが起きているものと思われる (そうでなければ私は呼ばれはしないのだ)。

一人のイカヅチ頼みではなく、情熱を伴いながらチームと仕組みで勝つことを目指さねばならない。そのナビゲーションが、私に課せられたミッションだ。魅了されたい誘惑を横に置き、課題の真因をつかまえること、ありたい姿への探求を、現場とともに進めていく戦略を立て続けなければならない。大変な仕事だ。

だから、面白い。

Photo credit: Scott Butner via VisualHunt / CC BY-NC-ND

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